facebook 有限会社 中むら - 東京都が選定した名産品や特産品を紹介【BuyTOKYO】

有限会社 中むら

代表取締役 中村新氏

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念願の“ショールーム開設計画”を実現すべく、
Buy TOKYO推進活動支援事業に応募

 1923年に東京都神田で創業し、悉皆屋(しっかいや)として、着物の染めや洗い張り、あつらえ等を請け負っていた中むら。2006年からは休眠状態となっていましたが、2014年に現代表の中村新さんが復活させ、のれん製作請け負う企業として新たなスタートをきりました。その背景には、「職人の手仕事の新たな価値づくりをしたい」という思いがあったと言います。
 「のれんを創るにはさまざまな方法があります。しかし、市場を見てみると、そのコミュニケーションに課題があると感じました。そこで、のれんが欲しい店・企業と多様な技を持つ職人たちとをつなぐ人間がいれば……と考えて、事業をはじめました。職人のさまざまな技を生かすことができれば、新たなのれんや職人技術の需要も生まれていくはずです。のれんって、おもしろいんですよ。江戸時代からある屋外広告であり、空間に境界をつくるもの。風に揺れ、向こうが透けて見え、取り外すことができるのれんを境界と捉えるのは、西洋にはない発想です。そういった話をすると、多くの方がのれんに興味を持ってくれる。のれんの制作を通して、のれんの文化的魅力も発信していきたいと考えています」
 のれんの魅力を体感してもらうために中村さんが以前から考えていたのが、ショールームの開設。Buy TOKYO推進活動支援事業に応募したのも、この計画を実現させるためとか。
 「弊社がショールームをつくりたいことを知っていた仕事関係者が、この支援制度を紹介してくれたんです。2021年に応募し、同年8月から支援がスタート。支援期間が約2年間あるので、1年目はショールームの開設の準備、2年目からは展示会の参加とポップアップショップ開催に向けた準備を行ってきました」

  • 代表取締役 横関謙治氏
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のれんに触れてくぐる。職人技を間近で眺める。
リアルな体験が心をつかみ、
のれんと伝統産業の未来を広げてくれる

 ショールーム開設にあたっては、経費補助を活用。2022年9月7日にオープンしたショールームは、シンプルながらもこだわりの構造になっています。天井にのれんをかけるポールを取り付け、照明はギャラリーのような柔らかな光を採用。のれんが風に揺れるたび、光を透かすたびに、染めや刺繍の繊細さを伝えてくれます。
 現在ショールームに掲出されているのは、サンプルとして同社が制作したのれんです。第一線で活躍するクリエイターと、染め、刺繍、織りなどさまざまな技術を持つ職人たちとのコラボレーションによって制作されました。中むらにとって職人は、のれんの面白さと可能性に共感し、ともに未来を築いていく仲間のような存在です。
 「制作の進め方はさまざま。『こういう技術でこういう表現ができる職人がいるけど、のれんのデザインに落とし込めない?』と私からクリエイターに投げかけることもありましたし、工芸に詳しい美術家の方から『こういうのれんをつくってみたい』と提案されることもありました。クリエイターの高い要求に応えるために、職人たちは試行錯誤したり新たな手法を開発したり……。のれんとともに伝統産業の可能性を広げていくことが、ディレクターやプロデューサーの立場を担う中むらの役割です。今回開設したショールームの空間は、その役割を果たせています。ショールームがあることで、未来は広がっていくと感じています」

ハンズオン支援では、デジタルコミュニケーションの指南を依頼。
力の入れどころが明確になった

 ハンズオン支援では、デジタルコミュニケーションの専門家にサポートを依頼。ショールームのwebサイトを開設しました。
 「アドバイザーには、のれんと弊社のサービスをどう伝えるか、どうしたら顧客に共感してもらえるか、さまざまな視点から助言してもらいました。サイトの活用方法や広告をどのように出すべきかなども相談しましたし、GoogleアナリティクスとGoogle広告の使い方も教えてもらいましたね。こういうのって、会社個々によって知っておくべきことが違うんです。個別にアドバイスしてもらえたので、効率よく知ることができたと感じています。また、小売業ではないのでSNSよりwebサイトの方が有効活用できると言われ、どこに力を入れるべきかが明確になったのも収穫でした」
 効率の良いデジタルコミュニケーション手段は、多くの企業にとって関心事項。特に、中むらのように人的リソースが少ない企業にとっては、重要な課題なのです。
 「今までもコーポレートサイトはあったので、最低限のことは知っていたつもり。でも、効果測定方法などをきちんと理解したうえで運用すると、こんなにも有効活用できるものなのだなと再確認させられています」

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新規顧客へのアプローチのため、
出張版ショールームとして、ポップアップイベントを計画中

 今回の取材を行ったのは、2022年10月。ショールームが稼働してまだ1ヶ月ほどですが、「見て、触れて、くぐる」という体験をしてもらうことの大きさを、すでに実感していると言います。
 「『楽屋にこの素材と染色技法ののれんが欲しい!』と発注いただいたり、『染めののれんを考えていたけど、実物を見たら刺繍もいいな……』と想像を膨らませるお客様がいたり。事務所の机の上でカタログ等を見ていただいていたときとは、全然違いますね」
 ショールーム開設に続く目標は、出張版ショールームです。「具体的には、ポップアップイベントを計画しています」と中村さん。ショールームが既存客へのアプローチであるのに対し、ポップアップイベントでは、のれんの魅力や中むらのことを知らない人々との出会いを期待しているのだそうです。
 「弊社の取引先は、設計事務所やデザイン事務所が半数以上を占めています。なので、そういった取引先の目にとまるよう、企業の共同スペースや合同見本市にのれんを掲出するポップアップイベントを開きたいと考えているんです。今は、イベントで使うのれん専用の什器などの準備を進めているところです」
 ここにも、Buy TOKYO推進活動支援事業の経費補助は活用されています。
 「Buy TOKYO推進活動支援事業は幅広い用途で経費補助を使えるので、さまざまなアプローチで販路開拓に取り組めています。でも一番大きかったのは、やはりショールームの実現。お客様からのご要望もありましたし、以前からずっとやりたかったことなので。もちろん、ここまでお話しした経費補助やハンズオン支援以外にも、メリットはたくさんありましたよ。例えば、申請書を書くことは、事業やビジョンの振り返りになりましたね。文章化することで、考えが整理されていくんです。今回、BuyTOKYO推進活動支援事業での支援を受けたことで、中むらは次のフェーズに進むことができたと感じています」

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