株式会社 エーゾーン
代表取締役 横関謙治氏
突然のピンチを変革のチャンスに変えられたのは、
Buy TOKYO推進活動支援事業のおかげ
2011年に創業したエーゾーンの看板商品は、竹製クラフト「Japanese Pattern wa-gu-mi(以下、wa-gu-mi)」と木製立体パズル「Wooden Art ki-gu-mi(以下、ki-gu-mi)」。wa-gu-miシリーズは、竹素材にレーザーカットで緻密な和柄を表現。同じくレーザーカットで木のパーツを切り出したki-gu-mi シリーズには、さまざまなモチーフに加え、日本のアニメ作品、城や寺院などをモチーフにしたパズルも。そんな製品の特性からインバウンド需要が高く、「東京2020大会に向け、成長を続けていけるはず」と考えていたそうです。
しかし新型コロナウイルス感染症の拡大で、2020年にかつてない局面に立たされることに。エーゾーン代表の横関謙治さんによれば、「インバウンド客が激減する中、販路を広げねばと感じました」とのこと。さらに2022年からは、不安定な世界情勢と円安も、原材料調達などの面で懸念材料に。そんな逆境を変革のチャンスに変えることができたのは、2021年8月に支援がスタートしたBuy TOKYO推進活動支援事業のおかげだと語ってくれました。
展示会&遠方での広報活動に、経費補助を活用。
未開拓だった地域とジャンルに、需要を発見
国内での販路拡大のために取り組んだ施策のひとつが、展示会への出展です。2022年に初参加した京都の展示会では大きな手応えを感じ、2023年3月にも同じ展示会に2回目の出展を計画中。
「展示会にブースを出すと、少なくても100万円以上、弊社の場合は200〜500万円ほどかかります。これに経費補助が使えたのは助かりました。またBuy TOKYO推進活動支援事業の経費補助は、イベントにおける広報活動のための交通費や宿泊費などにも充てられるのがメリット。地方での活動やインテリアなどの未開拓分野への進出に、積極的になることができましたね」
経費補助により浮いた自社の資金は、未開拓分野での製品開発に利用したと言います。竹製のwa-gu-miで、旅館やホテルの家紋を入れたスイッチカバーなどを試作したり、料亭などで使うための箸置きをつくったり……。箸置きは楊子入れを兼ねています。みんなが触る容器から楊子を使うことに抵抗がある方もいるはずという、コロナ禍ならではの着眼点で生まれたもの。アイディアをすぐに形にできたのは、広報費等の経費補助で生まれた金銭的ゆとりがあったからといえそうです。
ハンズオン支援で、EC販売を強化。
自社ECサイトの販売比率が6倍に。越境ECも好調
実店舗だけでなく、ECサイトでの販売にも力を入れました。ここでは、Buy TOKYO推進活動支援事業のハンズオン支援を大いに活用。
「SEO対策の専門家やライターなど、各分野に精通するアドバイザーに話を聞くことができました。助言してもらいながら、自社ECサイトを改修するだけでなく、楽天・日本版Amazonにも公式ショップをオープン。コロナ以前は5%程度だった国内のEC販売比率は、今期30%までアップしたんですよ。ECサイトの実務にあたっている企画マーケティング部の社員も、『よくわからず後回しにしてきたことが、ハンズオン支援で一気に前進した』と喜んでいますね」
国内向けEC販売の強化に続いて、海外でのEC販売にも着手しました。まずはアメリカ版Amazon、次に中国のAlibabaでの販売を開始。本記事取材時は販売開始から数ヶ月ほどでしたが、すでに複数の企業から「実店舗で販売したい」と買付けの問い合わせがあり、滑り出しは上々です。
「これからが楽しみですね。ノウハウができたので、他の国々の越境ECでも販売したいと考えています」
ブロックチェーンで海外進出を!
前人未踏のチャレンジもスタート間近
海外進出に関しては、EC販売だけでなく、「Azone System」というオリジナルの手法での展開も計画中です。
「弊社の製品は、データさえあればレーザーカットで生産することができる。この強みを生かし、世界各国で現地の原材料を現地でレーザーカットして販売できるようにしたいなと。弊社は製品のデータを支給し、今までにはない“実物を扱うブロックチェーン”を築くわけです。この「Azone System」による世界制覇が現在の夢ですね
このプロジェクトも、Buy TOKYO推進活動支援事業の支援対象。現在、準備を整えている最中です。
ここまでご紹介したほかにも、同社はさまざまな用途での経費補助とハンズオンを活用しています。幅広い施策を実行に移せたのは、Buy TOKYO推進活動支援事業が約2年間という長いスパンでのサポートだからこそ。
「他の助成制度の多くは、期間が1年。一方、Buy TOKYO推進活動支援事業は約2年間あり、補助金は1年ごとに区切って交付してもらえる。スパン的にも費用のやりくりの面でも、ありがたいですね。また、ハンズオン支援でさまざまな分野のアドバイザーと、複数人で話せたことも印象的でした。プロが集まると、1+1が3にも4にもなるんです」
取材のラスト、横関さんにコロナ禍に突入した2020年からの総括を伺うと、「右肩上がりのときだったら、支援を受けようと考えなかっただろうし、『Azone System』で海外進出というビジョンも生まれなかったかもしれません。逆境だったからこそ、刺激がありましたね」と、笑顔で答えてくれました。また、この先のビジョンについては「コロナも円安も、この先どうなるか、まだまだわからないですけどね。備えておこうと思っています」とのこと。Buy TOKYO推進活動支援事業の支援スタートとともにはじまったエーゾーンの“新たなる世界”での挑戦は、今回の支援が終了する2023年3月以降も続いていくこととなりそうです。