株式会社イースマイル
代表取締役社長 仲村淳氏
株式会社イースマイルの仲村淳社長は、高校生時代のアルバイトや最初の社会人生活で経験を積み、飲食店経営と通販会社を立ち上げたのち現在のイースマイルを設立しました。
「大学卒業時に40歳までに飲食店を出すと目標を掲げ、店舗経営のノウハウを得るため創業者の近くで働きたいと某飲食チェーン店で社会人生活をスタートしました。当時はお店に正式なマニュアルがなかったため多店舗化を進めるためには、標準化する必要があるとの思いから、社長に頼み込んで、マニュアル作成を提案し、自ら担当させてもらいました。3か月間くらいは朝から夕方まで店舗に入り、夜、会社に戻りマニュアルを作成しました。マニュアルにより多店舗展開することに貢献でき、今の仕事に生きていると感じています。」
その後、仲村さんは六本木で念願の飲食店経営をスタートしたのち、通販会社の立ち上げ、独立を経て2004年、現在のイースマイルを設立しました。
販促物等を作り込み、商品と一緒に提供
商品の販促物を商品と一緒に提供することが重要だと仲村さんは語ります。数多くの商品を展開するためには同時に多くの販促物も提供する必要があり、過去の業務標準化、マニュアル化のノウハウが活かされているようです。
「飲食店で多店舗展開していくためには、いかに同じことをしてくれる人を多く作るかが重要です。新人時代にマニュアルを作った経験は、多くの商品を売るための販促物やLP(*注1)を作ることに役立ったと感じています。
イースマイルのビジネスモデルは、商品販売するための販促物をしっかり作り込み、商品と一緒に提供することです。卸売りする際に必ず販促物を一緒に納品しており、商品と一緒に店頭展開するとすぐに売れるよう企画しています。」
販促物やECにおけるLPは、少し改修することでプロモーションの状況に応じて容易に変換させることができると仲村さんはいいます。
「2000年頃から世間では空前の美容商品ブームが始まり、当社が出店している「楽天市場」店舗ページでも、サプリメントなどお客様の心に少しでも刺さるポイントがあれば楽に月間1万個以上売れ、毎週のように美容系の新商品を出していました。販促物やLPは相当作り込みの練習ができ、今と同じ25-55才のECターゲットが何を欲しているかおおよそ学ぶことができました。」
*注1 LP:ランディングページの略で、バナー広告やリスティング広告などを経由して訪問者が最初にwebサイトにアクセスするページのこと。いかにここでお客様の関心を引けるかがweb販売の成否を分けると言われています。
インパクトを与える商品名や画像になるよう工夫
イースマイルでは、購入につなげるためやリピーターになっていただくためのさまざまな工夫やテストをしていると仲村さんは言います。
「まず購入していただくために、一度聞いたら忘れない商品名や販促物のトップ画像など、強烈なインパクトを与えるように工夫をしています。「さよならダニー」の販売を始めたころは、家の中に何匹ダニがいるか一般の方は知らない時代でしたので、“100万匹のダニの上で寝ているイラスト”で恐怖というインパクトを与えて、ヒット商品につなげていきました。
次に、1度購入していただいたお客様にはリピーターになっていただくことが大事です。リピートするとクチコミしたくなりますから“どれだけ簡単にクチコミできるか”、“どれだけ簡単に説明できるか”まで考えて販促物やLPを作成しています。
さらに重要なのは、テスト販売を繰り返すことです。楽天市場の自社サイトで最初は300個/月も売れない商品に対して、表記方法や画像をいろいろ差し替え500個/月、そして1000個/月と売れるまで何度もテストを繰り返しています。ある程度売れ、認知度が上がったタイミングで卸売先への販売を開始しています。そのタイミングでは、卸売先はそのままアップすれば売れる販促物や仕組みができています。これを繰り返していると海外からも取り扱いたいという問い合わせが入るようになりました。」
越境ECでは販売先の規則や文化の理解が必要
イースマイルが台湾を拠点にすることになった背景には、中国市場での販売経験があったと仲村さんは語ります。
「台湾にはすでに日本と相性の良い越境ECサイトがいくつかあったため、台湾向けに力を入れていこうと思っていた矢先に、日本では大して売れなかった、女性の毛髪をボリュームアップすることができる美容商品が中国で突如売れ始めました。
中国人女性は毎日髪の毛を洗う習慣が無いため、髪の毛にボリュームを出しにくいという悩みを解決できたことが、2017年当時月間5万個のヒットにつながりました。しかし、あっという間に海賊版が出て、2023年の今ではほとんど売れなくなってしまいました。
たとえ事前に特許や商標登録をしていても、3か月サイクルで売れ筋が変わりますし、中国販売は本当に難しいと感じています。
そのため、同じ商品でもロングタームで売ることができる台湾を再びメインターゲットに変更しました。今ではある程度安定して販売できる仕組みが出来上がりました。」
ヒット商品でも、越境ECでは販売国のルールを充分に把握しておく必要があると言います。
「最も注意しなければならないことは、越境ECでは、輸出先(送付先)の国の規則や文化を理解した上で販売する必要があるということです。中国では、化粧品の成分がネックになり、輸出できない商品がたくさんあります。また台湾は配送が難しい場合があります。個人発送が難しいとか、購入後のキャンセル、受取拒否の場合は発送側の負担となるなど、トラブルも多くあります。缶タイプの商品は火器扱いになってしまい、空輸はできません。
輸出先の規則や文化の問題で、海外で売れそうなものが販売できない場合は、表現方法を変えたり、売り方を国別に変えていかなければなりません。日本と同じではダメだということを十分に理解する必要があります。」
イースマイルでは海外に販売したい東京都のメーカーとも是非協力して、東京の素晴らしい商品を世界に販売していきたいとお考えです。
「インバウンドが復活して、沢山の外国人が訪日しています。店頭販売でも中国語、英語のPOPを作成すれば、自社商品についてもっと知ってもらうことが可能です。我々の販促物作成のポイントをいかして、インバウンドにも刺さるPOPを作成して店頭に設置してください。何千キロ、何万キロと離れた外国から来たゲストの方が、皆様の店頭までやってきていますので、是非、積極的にPRして欲しいですね。
最後に私からの提案として、当社の楽天市場店舗ページでテスト販売をして、ヒット商品づくりのお手伝いをさせてください。ひとつでもいいから国内、特にこの東京からヒット商品を作って、越境ECにチャレンジしていきましょう。
ヒット商品ができれば、2021年東京都の海外向けECモールモデル構築事業補助金を活用させていただき制作した“台湾向けECモール『東京百貨店~TOKYO Depart~』」”での販売も可能です。東京発の商品を、越境ECを通して一緒に販売していきましょう。」